クラシックバレエの中でも最も知られている作品の一つである《眠れる森の美女》
そんな名作のあらすじと、音楽的な特徴、これまでのバレエ作品と異なる点を音楽家の視点から説明していきたいと思います。
バレエ《眠れる森の美女》のあらすじ
物語の舞台は中世のドイツ。
王女オーロラの命名式に6人の名付け親の妖精たちが集まり王に挨拶しています。
彼らは贈り物として
王女が絶世の美女になること
優しい心を持つこと
などを約束します。
最後にリラの精が王女に近付こうとした時、邪悪な妖精カラボスが現れ
「私は 名付け親として招待されなかったが贈り物をしよ う。オーロラはある日、指に紡ぎ針を刺して永遠の眠りにつくだろう!」
と叫びます。
そこで、まだ贈り物をしていなかったリラの精が
「オーロラは100 年後に王子のキスによって永い眠りから目覚め、幸せに暮らすだろう」
と約束します。
そして月日が流れ20 歳の誕生日の祝宴。
オーロラは老婆に変装したカラボスの持っていた紡ぎ針を指に刺してしまい100 年の眠りについてしまいます。
100 年後リラの精に導かれたデジレ王子が茨に閉ざされた城を訪れ
オーロラにキスをすると魔法が解け目を覚まします。
王子はオーロラに愛の告白をし婚礼の祝宴を上げ、そこにはおとぎ話の世界からたくさんのお客さんが来るのでした。
(ちなみにカラボスもこの婚礼にシレっと参加しています)
バレエ音楽を伴奏から交響曲に変えたチャイコフスキー
眠れる森の美女は 1890 年にチャイコフスキーによって作曲されたバレエ作品で
とともに「3 大バレエ」と称される重要な作品です。
この作品は3大バレエの中でも音楽的に最も革命的な作曲がされており、それ以前のバレエ音楽とは一線を画すものでした。
それまでロマンチック・バレエの音楽は踊り手のための伴奏音楽のような位置付けで、あまり変化のない単調な曲が多く壮大さとは無縁なものでした。
《ジゼル》や《コッペリア》《ラ・シルフィード》、などはあくまでも「踊りが主体の音楽」
しかしチャイコフスキーは
「バレエ音楽も交響曲と同じである」と考えていました。
弟子のタネーエフへの手紙では
「なぜ『バレエ音楽』が付随的なものとして蔑まれるのか全く理解できない!音楽が立派であれば、ダンサーがそれに合わせて踊ろうと踊るまいと、その音楽にどのような違いが生じるのだろうか?」
と語っています。
当時の音楽界ではバレエ音楽はあくまでも踊り用の芸術性の低い音楽
という扱いで、総合芸術はあくまでもオペラ。
ちなみにチャイコフスキーの交響曲は非常に重厚で壮大です。
振付家のプティパはチャイコフスキーを大変尊敬していたので
バレエ音楽の中に交響曲を作曲するときと同じあらゆる音楽的創意工夫を織り込む自由を与えました。
つまり「踊りがなくても成立する音楽」を作ったのです。
バレエなしでコンサートをしても十分に楽しめるような、キャラクターに富んで劇的な音楽。
その結果《眠れる森の美女》は台本、舞踏、音楽、美術等が素晴らしい完成度で調和し
19 世紀クラシックバレ エ最大の作品、ロシア芸術の最も重要な文化財の 1 つとなったのです。
この「ローズアダージョ」というのは
オーロラ姫が求婚にきた王子たちからバラの花を受け取る
というほのぼのとした内容なのですが、最後は金管楽器の大ファンファーレととてつもなく大袈裟な音楽になっています。
そしてこの作品の中にはこのようなトリッキーな踊りと音楽もあります。
The Sleeping Beauty - White Cat and Puss-in-Boots pas de deux (The Royal Ballet)
バレエ音楽が変わりバレエも変わっていく
チャイコフスキーの改革によってバレエその後どんどん変化していきます。音楽の内容が重くなるほどバレエのストーリーや振付にも影響がでていくわけですね。
そしてこれによって「バレエ音楽」というものの位置付けが音楽界でも大きく上昇したといってもいいでしょう。
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