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バレエ《ラ・シルフィード》のあらすじと解説~悲しい原作《トリルビー》~

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《ラ・シルフィード》は《白鳥の湖》《ジゼル》とともに3大バレエ・ブランと呼ばれ、ロマンティックバレエの代表的な作品です。

初演は1832年にパリ・オペラ座で行われました。

ジゼルよりも古い作品。

 

ラ・シルフィードのあらすじ

第1幕

舞台はスコットランドの農村。

農夫のジェームズエフィーとの結婚式の朝に空気の精シルフィードが現れジェームズに愛を告白し

 

結婚なんてやめて2人で森で暮らしましょう

 

と誘います。

 

ジェームズはエフィーを愛していたので断ろうとしますが、

シルフィードがあまりにも理想的な美女だったため心が揺れ動いてしまいます。

 

そこへ魔女が現れ

「エフィーはお前とは結婚せずにお前の親友のガーンと結婚する」

と不吉な予言をします。

しかしエフィーを愛しているガーンはこの予言に希望を抱きます。

 

婚礼の儀式が始まろうとしているところに再びシルフィードが現れ、

ジェームズの結婚指輪を取り上げて森へ消えてしまいます。

ジェームズは花嫁を置き去りにして後を追います。

 

それを見たガーンはエフィーに求婚します。


第2幕

シルフィードを追って森へきたものの、シルフィードは抱きしめようとするとすっと消えてしまいます。

 

取り残されたジェームズは婚約者を裏切った後悔とシルフィードが自分のものにならない満たされない想いに苛まれます。

 

そこへ魔女が現れます。

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魔女は心配しているかのように話しかけジェームズに心のうちを語らせます。

「シルフィードのためなら死んでもいい!」

 

とまでいうジェームズに魔女はショールを手渡し

 

「これでシルフィードを包めば羽が抜け落ちて飛ばなくなる。永遠にお前のものになるぞ」

 

と言い、ジェームズは喜んでそれを受け取ります。

 

ジェームズが再び現れたシルフィードの肩にそのショールをかけると

背中の羽が抜け落ち、もがき苦しみながらも「愛に後悔はない」と言葉を残して息絶えてしまいます。

 

そして絶望するジェームズの前をエフィーとガーンの結婚式の列が通り過ぎ、全てを失ったジェームズはその場に倒れこみ嘆き苦しみながら息絶えます。

そしてあたりには魔女マッジの嘲りの笑い声が響いているのでした。

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作曲家 ジャン・シュナイツホッファーは元ティンパニスト(1785-1852)

ラ・シルフィードの作曲者はジャン・シュナイツホッファーで、初期ロマン派の人物。

ベートーヴェンやフンメルと同世代なので他のバレエ音楽の作曲家よりも一世代前と言えます。

 

シュナイツホッファーはパリ国立高等音楽院で作曲とピアノを学び、

30歳から38歳はパリ・オペラ座のティンパニ奏者として働きます。(なぜプロフェッショナルなティンパニの技術があったのかは調べてもよくわかりません…)

その後彼はオペラ座のバレエ音楽作曲家になり8つのバレエを作曲し、作曲家として成功を収めたのでした。

 

ラ・シルフィードの初演はトウで大成功

《ラ・シルフィード》ではその当時はまだ珍しかった、女性がトウ(爪先)で立つという技巧を駆使して妖精の軽やかさを表現することに成功し大好評。

それ以後女性たちは競ってトウで踊るようになっていきました。

 

これによりバレエの根本的なスタイルが確立されたといってもいい大変重要な作品です。

 

100年間忘れ去られていたラ・シルフィード

センセーショナルで大変人気だったラ・シルフィードですが、その後どんどん作られていった派手なバレエ作品に押されたのか全く上演されなくなってしまいます。

 

その後100年間パリで上演されることがありませんでしたが

1971年にフランスの振付家ピエール・ラコットが古い資料をもとにパリオペラ座で蘇演し、世界中に広まりました。

 

 

バレエ・ブラン

バレエ・ブランとは「白いバレエ」という意味で、白鳥の湖やジゼルのように女性ダンサーたちが白い衣装を着て踊る場面・作品のことです。

「白物」と言ったりもします。

 

ラ・シルフィードの魅力

繊細な妖精の演技

ロマンティックバレエなのでバレエの超絶技巧をみせるというものではなく、

より演技や表現に重きが置かれています。

ふわふわと舞うまさに妖精のようなバレリーナの演技と踊りは他の作品にはない魅力があると思います。

 

また人間が死んで妖精になったジゼルとは違い、シルフィードは最初から妖精なこともあり

キャラクターがとてもかわいらしいところも魅力の一つです。

 

見慣れないスコットランドの衣装

スコットランドが舞台になっているバレエは珍しく、男性がスカートをはいている独特な衣装がみられ違った文化を観ることができるのもこの作品の魅力の一つです。

 

ラ・シルフィードの原作《アーガイルの妖精トリルピー》

ラ・シルフィードの原作は、《コッペリア》の原作「砂男」の著者ホフマンと同世代

フランスの作家シャルル・ノディエ

《アーガイルの妖精トリルピー》という作品です。

ラ・シルフィードではコッペリアと同様、内容は原作とは大幅に変えられています。

 

展覧会の絵とラ・シルフィード

ちなみにラ・シルフィードの初演から数十年後の1870年に

白鳥の湖や眠れる森の美女を振り付けたマリウス・プティパがこの物語をバレエ化した《トリルピー》という作品を作ります。

 

バレエ《トリルピー》の衣装はヴィクトール・ハルトマンが担当。

ハルトマンはムソルグスキーとも親交があり

彼の遺作展で大きな感銘を受けたムソルグスキーが作った名曲「展覧会の絵」はとても有名な作品です。

 

そしてムソルグスキーが着想を得た作品の中に

バレエ《トリルピー》の衣装スケッチがあったのです。

それが「卵の殻を付けた雛の踊り」です。

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音楽家としてはラ・シルフィードと展覧会の絵がつながっていくのは非常に興味深いです。

アーガイルの妖精トリルビーのあらすじ

 昔スコットランドのアーガイル地方にトリルビーという悪戯好きの妖精がいて、漁師ダガルの家の暖炉に住んでいました。

 

若くて美男のトリルビーは、湖で渡し守をしているダガルの美しい妻ジャニーに惚れ込んでいました。

 

トリルビーはダガルの漁を助け豊漁にし、家を隅々まで点検して安全を守っていました。

そしてトリルビーは毎晩ジャニーの夢に現れて一途な愛を示していました。


トリルビーは良いことをもたらす害のない妖精ですが、段々愛情がエスカレートし

ジャニーは昼間もトリルビーの愛の気配を感じるようになった。

 

それを後ろめたく思ったジャニーが夫ダガルにトリルビーの愛のささやきが恐ろしいと告白すると、

ダガルは修道院から長老を呼び、トリルビーを家から追い払ってもらうことにします。

 

ロナルドは修道院を荒らして修行者を苦しめる妖精たちをとても敵視していて、

さっそく祈祷によってトリルビーをダガルとジャニーの家から追い払ってしまいます。

 

・トリルビーが戻って来ることをジャニーが許す

・ダガル自身がトリルビーを連れて来る

という条件を満たさないとトリルビーは二度と家に来ることができなくなってしまったのでした。


祈祷がまた終わらないうちからジャニーは後悔し始めます。

祈祷の内容からトリルビーが悪い妖精ではないこともわかり、

いなくなるとわかったら、自分がどれほどトリルビーを愛していたかはっきりとわかってしまったのです。

 

 

トリルビーがいなくなり1年経つと、漁をしてもほとんど魚がかからなくなり、青魚は一切とれなくなった。

トリルビーはジャニーの夢に出てくるものの悲しげな美青年の姿。ジャニーは激しく後悔します。

 

不漁とジャニーに悲しみを何とかしたいと思ったダガルは僧院でひらかれる聖コロンバンの徹夜祈祷祭に2人で参加し祈りを捧げることにしました。

 

祈祷祭を仕切るのはトリルビーを追放した長老で、彼はこの祈祷で妖精たちに呪いをかけて彼らを撲滅させると心に決めていました。

長老の一番の狙いはトリルビーでした。

 

初めは驚いた参加者たちも長老の勢いに飲まれて一斉に妖精への呪いを始めます。

 

聖職者であるはずなのに呪詛を始めたことに失望し、耐えられなくなったジャニーは退室し僧院の廊下を歩いていました。

するとそこにはこの地の統治者一族の肖像画がかかっており、ジェニーはなぜか一番端の幕がかかっている肖像画に惹きつけれました。衝動的に幕を外してみると

そこに描かれていたのはまさにトリルビーそのものでした。

ジョン・トリルビー・マック=ファーレンは修道院に年貢を納めるのを拒否したことで破門され城をでていった最後の当主だったのです。

 

ジャニーはすぐさま聖コロンバンの墓へ走りトリルビーがこの呪いから逃れられるよう祈りました。

 

それからほどなくしてジャニーは仕事帰りに、

渡し船に乗ろうと岸辺に立っている老人と出会い、船に乗せてあげることにします。

話を聞いていると老人はトリルビーに会いに行くとのことでした。

 

ジャニーは

「トリルビーを愛していたのに追い出してしまい後悔している」と話したところ

その瞬間に老人は大喜びしてトリルビーの姿に変わりました。

トリルビーはジャニーの家に帰りたいと懇願します。

 

追い出されてから惨めな気持ちで放浪していたトリルビーでしたが、

聖コロンバンの導きでジャニーの愛が伝わり再びジャニーの元へやってきたのでした。

 

・トリルビーが戻って来ることをジャニーが許す

・ダガル自身がトリルビーを連れて来る

 

というのがトリルビーが戻ることのできる条件だったので、後はダガルがトリルビーを連れてくれば一緒に暮らすことができます。

 

その時にダガルの船が近づいてきたのでトリルビーは湖に飛び込み

青魚を大漁にして網に宝石箱も仕込みます。ダガルは大喜びでそれを持ち帰ります。

家にはいると、宝石箱の中からトリルビーが

「君が『愛してる』とさえ言えば僕はこの箱からでてまた君と一緒に暮らせるんだ」

とジャニーに話しかけます。

ダガルが連れて帰るという条件はクリアしているのであとはジャニーが許すだけ。

 

しかしトリルビーを再び家に入れるのは夫を裏切ることになるのでジャニーは混乱します。

それほどトリルビーに男性としての魅力を感じていたのです。

 

ジャニーは自分の心が恐ろしくなり家を飛び出して湖にいき、網の手入れをして心を落ち着かせようとします。

しかし気が付くとジャニーは墓地の方に向かっていました。

墓地には聖コロンバンにちなんだカバノキがあり、その側に新しい空っぽの墓穴が一つありました。

 

そしてその前には祈祷中の長老と宝石箱をもったダガルがいました。

 

長老の呪いをうけた宝石箱は壊れ、そこから一筋の光がでて

「ジャニー!!」

とトリルビーの悲しげな叫びが聞こえたと思うと、その声と光はカバノキの中に消えていきました。

 

トリルビーは長老の呪いによってカバノキに封じ込められてしまったのです。

 

ジャニーは「トリルビー!!」と叫び

カバノキの側にあった墓穴に飛び込み死んでしまいました。

 

 

 

トリルビーは男性の妖精

ラ・シルフィードとの最も大きな違いは妖精が男性ということですね。

当時のバレエのスタイルからしても女性の妖精がふわふわと踊る方が自然なので変更は当たり前だったかもしれません。

男性が妖精役をやる「薔薇の精」が作られたのは20世紀に入ってからなので、とてもモダンに感じられたかもしれません。

そして男性が妖精をやるのは単純にニジンスキーのようなダンサーなしでは考えられなかったのかもしれませんね。

 ニジンスキーについて↓

 

原作を知ることでより楽しむ

コッペリアのようにバレエは文学などの原作をより分かりやすく親しみやすく変えているものが多いですが、

原作を知ることで描かれているテーマをより理解できたり深く知ることができると思います。

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